2022.4.30
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放置した歯周病が引き起こすさまざまな症状や病気
こんにちは。
歯周病は、むかしは歯槽膿漏と呼ばれていた病気で、歯周組織という歯を支えている歯肉や歯槽骨という歯の周りの骨などの組織に生じます。このように聞くと、歯周病は単なる歯周組織に生じた病気に思われがちですが、放置しているといろいろな病気の原因となります。歯周病を適切に治療しなければ、どのようなことが起こりうるのでしょうか。今回は、歯周病を放置していた場合に起こりうるリスクなどについて順を追ってお話しします。
図:歯周病進行のステージ
歯周病を放置していると起こりうること
歯周病を放置しているとどのようなことが起こりうるのでしょうか。
歯肉からの出血と腫れ
歯磨きをしたら歯肉から出血したことありませんか。歯周病を放置していたときに、まず最初に起こるのが、この歯肉からの出血です。
歯肉から出血したり、歯肉が腫れたりしたら、歯周病の初期症状である歯肉炎である可能性が疑われます。この段階で適切な治療を受けていれば、歯周病は比較的簡単に治せますが、単なる出血だと思って放置していると、歯周病は歯肉炎から次の段階に進みます。
歯肉炎から歯周炎に発展
歯肉炎の次のステージは、歯周炎です。歯肉炎と歯周炎の違いは、炎症の範囲です。
歯肉炎では、名前の通り歯肉だけに留まりますが、歯周炎では炎症の範囲が歯肉から歯を支えている歯槽骨など深いところにまで広がります。歯周炎になると、歯を支える骨が病的に減少していきますので、歯肉の腫れや痛みだけでなく、歯の動揺も感じるようなります。
膿がたまる
細菌が原因で膿が溜まった状態を膿瘍と言います。膿瘍は、お口に限らずいろいろなところに生じるものですが、歯肉にも生じ、歯肉に生じたものは歯肉膿瘍や歯槽膿瘍とよばれます。歯肉に生じた膿瘍は、赤く腫れていて、押さえるとぶよっとした感じがあります。もちろん、腫れているので、押さえると痛みを感じます。ある程度大きくなると、風船が弾けるように膿瘍も潰れて、中に溜まっていた白っぽい膿が流れ出します。
歯が動く
歯周炎に進行すると、歯槽骨にまで炎症が広がります。すると、歯を支えている骨が減り、歯がぐらぐらと動くようになります。最初は、横方向の揺れから始まります。やがて前後方向にも揺れるようになり、最後には押さえると沈み込むような揺れ方にいたります。揺れ幅が増えていくことにより、違和感が増すだけでなく、食事も取りにくくなります。
歯が抜けてしまう
歯周病の進行に伴って歯槽骨がどんどん溶けていきます。歯槽骨は歯を支える大切な骨ですので、この骨が減ってくることで、歯の揺れ幅はますます大きくなります。やがて、歯を支えることが難しいくらいにまで歯槽骨は減ります。ことここに至れば、残念ですが歯を抜かなければならなくなります。
智歯周囲炎
智歯周囲炎とは、親知らずの歯周病です。親知らずの多くは、傾いていたり、歯肉が覆っていたりするなど、きちんと生えていません。上下逆さまに生えていることもあります。しかも、歯の中でも最も奥にあたる歯です。
生え方が悪い上、最も奥にある歯ですから、歯磨きがしにくいため、しばしば化膿して腫れてきます。単に親知らずの周りの歯肉だけが腫れるのならいいのですが、顔まで腫れてくる方も珍しくありません。
蜂窩織炎
蜂窩織炎とは、筋肉と筋肉の間など体のさまざまな隙間に細菌が入り込み広がったひどい化膿した状態です。このように聞くとお口にはあまり縁のない話に思われるかもしれませんが、歯周病や智歯周囲炎が原因で蜂窩織炎になることがあります。
歯周病や智歯周囲炎が原因の蜂窩織炎は、顔を腫らしたり、喉を痛くさせたりと、かなり重篤な症状を引き起こします。お口が開けにくくなるため、食べたり飲んだりすることが難しくなります。飲み薬での対応が難しいような場合は、入院して点滴しなければならないこともあります。
壊死性潰瘍性歯肉炎
壊死性潰瘍性歯肉炎とは、歯肉が急速に壊死し、同時にひどくただれてくる病気です。お口の広い範囲の歯肉に同時に起こり、強い痛みや出血、発熱を引き起こしますし、強い痛みのために食事が取りにくくなります。壊死性潰瘍性歯肉炎は、若い方でもある日突然生じることがあるのが特徴です。
誤嚥性肺炎
誤嚥とは、本来は空気しか入ってはいけない気管に誤って空気以外ものが入ってしまうことです。誤嚥性肺炎は、唾液などがお口の細菌と一緒に気管から肺に入り込むことによって生じた肺炎です。細菌にもいろいろな種類があり、中でも誤嚥性肺炎を起こしやすいのは酸素が限られた環境を好む嫌気性菌というタイプの細菌です。
歯周病の原因菌も嫌気性菌なので、歯周病を放置していると嫌気性菌が増えていきますので、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
口臭
口臭の原因はいろいろありますが、食後の口臭など正常な口臭を除くと、口臭の原因の大多数は、歯周病と言われています。歯周病が進行すると、歯と歯肉の隙間である歯周ポケットが深くなります。深くなった歯周ポケットの内部には、歯ブラシが届きません。ここで細菌が繁殖し、硫化水素やメチルメルカプタンなどの臭いガスを作り出します。このため、歯周病を放置していると口臭が生じるようになるのです。
まとめ
今回は、歯周病を放置しているとどのようなことが起こるのか、についてお話ししました。
歯周病を放置していると
①歯肉からの出血と腫れ
②歯周炎に発展
③膿がたまる
④歯が動く
⑤歯が抜けてしまう
⑥智歯周囲炎
⑦蜂窩織炎
⑧壊死性潰瘍性歯肉炎
⑨誤嚥性肺炎
⑩口臭
など、さまざまな症状や病気を引き起こすようになります。
歯肉の腫れや出血を認めたら、歯周病の初期症状である歯肉炎になっている可能性があります。歯周病は日々の管理が必要になります。上記の症状に気が付いたら、早めに歯科医院で歯周病治療を受けるようにしてください。